電通の資料によると、2012年の日本の総広告費は約5兆8,913億円にのぼります。
これは前年比103.2%で、次のように 実にリーマンショック以降5年ぶりに前年比を上回りました。
2008年… 前年比95.3%
2009年… 前年比88.5%
2010年… 前年比98.7%
2011年… 前年比97.7%
2012年は東日本大震災の復興需要などで広告費が伸び、マスコミ四媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告費も2兆7,796億円と震災前の水準を上回っています。
上記の数字を媒体別にみていくと、
テレビ… 前年比103.0%
新聞… 前年比104.2%
雑誌… 前年比100.4%
ラジオ… 前年比99.9%
インターネット… 前年比107.7%
衛生メディア関連… 前年比113.7%
プロモーションメディア… 前年比101.4%
という内訳になっています。
次に業種別で比較すると、「自動車・関連品」が前年比126.9%という著しい進捗を見せました。それ以外では、「情報・通信」「精密機器・事務用品」「流通・小売業」「交通・レジャー」「ファッション・アクセサリー」「食品」と続き、個人消費が広告を牽引していることがわかります。
その一方で「家電・AV機器」が微減しています。これは国内メーカーの業績や競争力を反映してのことかもしれません。
このように、広告費は世の中の空気に敏感に反応します。広告費の伸びや、どんな業種の広告費が増減しているのかをチェックすることで、ある程度「時代の空気」というものを読み解くことができます。世の中が好景気に向かおうとしているのか、それとも失速感を感じている人が多いのかといったトレンドが広告費に素早く反映されるからです。
そして大きく広告費が減ったのが「案内・その他」前年比80.2%、「官公庁・団体」前年比30.6%といったところです。直接収益を生まない企業のPR活動などが大幅に抑制されていることが伺えます。
なお、官公庁・団体の広告費がいきなり1/3程度にまで圧縮されたのは、2011年の震災後の大量出稿による反動と見られます。
日本のGDP(国内総生産)と総広告費を比較すると、面白い相関関係が発見できます。
上記でご紹介した総広告費の前年比と、GDPの前年比を並べてみることでこの傾向がどのようなものであるかご理解いただけると思います。
総広告費 GDP
2008年… 前年比95.3% 前年比97.7%
2009年… 前年比88.5% 前年比94.0%
2010年… 前年比98.7% 前年比102.4%
2011年… 前年比97.7% 前年比97.6%
2012年… 前年比103.2% 前年比101.1%
このように、「広告費はGDPの変化のベクトルに比例しながらも、GDPよりも大きく振れる」という特徴を有しています。つまり景気が良くなる年も悪くなる年も、実体経済より広告費の方がビビットに反応するということです。
いろんな意味で「広告は世の中の鏡」であると言えますが、このような広告費にまつわる統計を見ていくことでも、日本経済の動向や消費の変化といったものを読み解くひとつのヒントが得られるのではないでしょうか。