日頃広告やマーケティングの仕事に携わっていらっしゃらない方には「ブランディング」という言葉に耳馴染みがないかもしれません。また、プランディングとは「高級ブランドなどのようなかっこいいデザインをすること」という風にお考えの方もいらっしゃるかと思います。
しかし、本来の意味でのブランディングとはもっと幅の広い意味を持つ言葉です。たとえばアパレルやジュエリーの高級ブランドがなぜ高級ブランドであり続けられるかというと、世の中の多くの人がそのブランドを認知し、その製品が高級であると認めているからです。
しかし、どんな高級ブランドでも、間違ってとんでもない粗悪な製品を売ってしまったらそのブランド価値は一気に地に落ちてしまうでしょう。ブランドとは顧客や社会との信頼関係でもあります。経営上の不祥事が発覚しても、または高弗化価値路線の商品をディスカウントストアなどで販売するようなことがあっても、あるいは反社会的で下品なCMを発表した場合でも、こうしたブランド価値はあっという間に傷つき大きく損なわれてしまうのです。
これはファッションブランドだけに限らず工業製品や食品でも同じです。どのような会社でも他社にない特長を持った優れた製品をつくり、その良さや他社との違い(=ブランド)を多くの人に知ってもらうために宣伝広告をして市場競争で優位に立とうとします。またパッケージデザインや「どういう販路で、どんな方法で売るか」という戦略も含めて、「より良い製品/企業イメージ」をつくり、守っていくこと。そのために行われるすべての努力の総和が「ブランディング」という言葉に集約されているのです。
このような幅広いブランディングの中で広告が果たす役割とは、その商品/企業の素晴らしさと特長を多くの人に知っていただくことです。
必ずしもかっこいい広告ばかりが良いとは限りません。たとえば「手作りの良さ」が売りの製品ならあえて泥臭いコマーシャルをつくることもありますし、「伝統を守る老舗」が売りのお店なら古風で頑固さを感じさせるような写真をメインに雑誌広告を制作する場合もあります。
たとえば長い歴史を持つ老舗店がCM広告の依頼をする際、オーナー様が「せっかくCMを制作するのだから、現代的なかっこいいCMを作ってほしい」とご希望になる場合もあるでしょう。もちろん技術的には可能ですし、そういうCMをテレビで見かけることはよくあります。しかし、必ずしもブランディングに成功しているとは言えないようです。
クライアントの業種・業態にふさわしくないCMを放映していくら世間の注目を浴びたところで、お客様を増やし業績に貢献できるとは限りません。「自社の魅力や長所はどこにあるのか。それを世間の人に訴えるにはどのような広告が望ましいのか」というブランディング的観点から自社に望ましい広告を追求することも大切ではないでしょうか。