日本の広告費に占めるインターネット広告費はすでに雑誌広告費や新聞広告費を追い抜き、8,680億円市場になっています。(新聞広告費6,242億円、雑誌広告費2,551億円、ラジオ広告費1,246億円、テレビ広告費17,757億円 データはいずれも電通の「日本の広告費」を参照)
インターネット先進国のアメリカでは、すでにインターネット広告費は紙媒体広告費を追い抜いています。ちなみにこれは先進国各国で普遍的にみられる状況です。
さて、インターネットの歴史は1995年、インターネットの民間商用利用解禁とともにスタートしました。日本でも1995年~1996年が「インターネット元年」と呼ばれ、アメリカにそれほど遅れることなくインターネットの普及が進み、広告分野においても20年足らずで今日の規模まで発達してきたのです。
ではインターネットにおける広告はどのように発達・成長してきたのか、その足跡をたどってみましょう。
インターネットのもっとも黎明期からスタートした広告は、バナー広告とメール広告でした。
バナー広告とは、「多くの人が閲覧するWebサイトに、企業や商品の広告用アイコン/文字を掲載することでネットユーザーへの知名度を高め、またハイパーリンクで関連サイトへジャンプできるようにした広告のことです。バナー広告の広告的価値を高めるためには多くのユーザーが日常的に利用するサイトへの露出が望ましく、そのためYahoo!などの検索サイトやポータルサイトはネットユーザーの囲い込みをはかり、それによって自社サイトの広告的価値を高めるというビジネスモデルが続出しました。
またメール広告は「電子メールやメールマガジンの文末・文中に広告を挿入する」というもので、このビジネスモデルを取り入れたメールマガジン発行サービスも数多く提供されました。
2001年頃、ADSLやCATV、そして光ファイバーなどのブロードバンドサービスが相次いで登場し、それ以前のインターネットの中心だったアナログ電話回線・ISDNなどのナローバンドからブロードバンドへインターネットの主流が移行します。それに伴い、徐々に動画広告やストリーミング広告、動的バナーなどが普及しました。
しかし、インターネット広告はもともと他のメディアにはないインタラクティブ性(双方向性)という特性を持っており、Webサイトを「紙面」あるいは「画面」に見立ててそのスペースを利用するという従来の広告手法だけで利用することには限界がありました。
そこで次に登場したのが、「ネットユーザーひとりひとりの行動特性にあわせて表示させる広告を変動させる」という「ターゲティング広告」や、検索サイト上部に検索キーワードに関連した広告が掲載される「リスティング広告」です。リスティング広告では1クリックごとに広告料金が発生・課金されるようになっており、四大メディアとは異なりネットユーザーの行動が追跡できるインターネットならではの広告形態であるといえるでしょう。
また、ネットユーザーが特定の商品やサービスに興味を持って集中的に検索を行うと、Webサイトの広告スペースに検索内容に近い広告が優先して表示される「コンテンツマッチ広告」という手法も一般化してきました。
一方、携帯電話などを対象としたモバイル広告も2000年代の半ばから急速な発達を遂げてきました。ユーザーの現在地情報などを利用してTPOに応じた広告の配信やリアルタイム型クーポンの発行などモバイル機器ならではの広告が発達し、特に携帯電話の機種に制限を受けないスマートフォンが普及した2010年以降はWebサイトの閲覧対象やインターネット広告の対象がPCベースからスマートフォン(あるいはタブレット)へ軸足を移しつつある観があります。
2004年以降、従来のインターネット利用法がより洗練され、新しいスタイルのネット利用法が普及・定着したことを指して「Web2.0」と呼ばれるようになりました。言葉の定義はあいまいですが、ネットユーザーは情報受信者であるだけでなく情報発信者でもあり、ネット上のクチコミやブログが企業に大きな影響を与えるようになってきたこと、そして広告もそうしたネットユーザーの行動の変化を織り込むようになってきました。ブロガーに対して提供されるアフィリエイトビジネスもその一環で、これは自分のWebサイトやブログの一部を広告スペースとして提供するだけでなく、ユーザーが率先して特定の商品やサービスの広告に関わり始める時代となったのです。