「PR」に関する誤解

日本語としてもすっかり定着している「PR」。就職活動などでも「自己PRをお願いします」といった言い回しがよく使われます。この場合は「自分のいいところをアピールしてください」というような意味でしょう。もともと和製英語の「PR」には「自己宣伝」という意味があります。
ただし、本来の英語である「PR=public relations」には自己宣伝の意味はありません。企業や団体、個人が自分の理念や主張を述べ、その理念を実現するための計画や努力の内容を説明して多くの人に理解や協力を求める活動のことをpublic relationsといいます。ですから、アメリカの企業において” Public Relations Department ”といえば日本で言う広報室に該当します。
とはいえ、実質的には広報室も自社の長所や理念の素晴らしさを社会に対してアピールしているわけですから、和製英語のPRもあながち間違っているとは言えないのかもしれません。

PR会社とは

世間には「PR会社」という業種があって、PRという言葉からの連想で「広告代理店と同じようなものだろう」と混同されることも多いのですが、上記の説明を読んでいただけるとPR会社のあり方について想像がつくかもしれません。要するに「広報の専門業」あるいは「広報室のアウトソーシング」とでも理解していただくとわかりやすいのではないでしょうか。
PR会社は企業広報についてより効果的な活動方法をアドバイスしたり、あるいはさまざまなメディアに企業情報が取り上げてもらえるようメディアと企業との間を取り持つ働きをします。より多くのマスコミに対して影響力の大きいプレスリリース能力やノウハウを持っているかどうかが決め手となるでしょう。

広告代理店とは

これに対し、広告代理店とはお客様の広告を制作し、その広告が実際に放送・出版・掲載されるまでの手続き業務を代行します。たとえば新聞というメディアの場合、新製品情報などを「記事」として取り上げてもらえるように活動するのがPR会社の仕事で、「広告」として掲載するのが広告代理店の仕事ということになります。

PRと広告の違い

企業のPR活動によるメリットは、広告代理店のそれとはかなり異なります。たとえばテレビというメディアの場合、バラエティ番組で自社の製品が話題に取り上げられればかなりの宣伝効果になります。しかも広告掲載料はかかりません。テレビに出るような有名人が製品を褒めちぎってくれれば、なまじのテレビCMよりもよほどインパクトは大きいと言えます。
ただし、PRの場合はあくまでも「どう評価・表現するか」の主導権はメディア側にあります。もっともアピールして欲しい点に触れてもらえなかったり、弱点や問題点をチクリと指摘されたりするようなことも考えられます。もともとメディアとは中立的な存在。広告は別として、PRについては公平客観的な立場で報道するのが当然です。ですから、取り上げられ方を間違えると宣伝効果どころかマイナス効果が発生してしまうリスクも考えられます。
PRも広告も「企業からのメディアを通じての情報発信」には違いありませんが、主導権の所在によってその内容には大きな違いがあります。このため、PR会社と広告代理店とでは別種のノウハウが必要で、それぞれが独立した業界となっています。